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          ・第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 クリスタル・グローブ・コンペティション部門 正式出品
          ・第23回東京フィルメックス コンペティション部門 観客賞受賞
          ・第44回カイロ国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門 正式出品
          ・第53回インド国際映画祭シネマ・オブ・ザ・ワールド部門 正式出品
          ・ヨハネスブルグ映画祭 正式出品
          
          ・第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 クリスタル・グローブ・コンペティション部門 正式出品
          ・第23回東京フィルメックス コンペティション部門 観客賞受賞
          ・第44回カイロ国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門 正式出品
          ・第53回インド国際映画祭シネマ・オブ・ザ・ワールド部門 正式出品
          ・ヨハネスブルグ映画祭 正式出品
映画、ではなく現実 次の世代に残してはいけない問題がここにある――
映画『遠いところ(A Far Shore)』
若くして母となった少女が、連鎖する貧困や暴力に抗おうともがく日々の中でたどり着いた未来とは。 若くして母となった少女が、連鎖する貧困や暴力に抗おうともがく日々の中でたどり着いた未来とは。
7.7金 全国順次公開 6.9 金 沖縄先行公開
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Introduction

次の世代に残してはいけない問題が
ここにある――

2020年代に入って国際的な映画賞や映画祭では、第77回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、第93回アカデミー賞では作品賞に輝いた『ノマドランド』、第78回ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞に輝いた『あのこと』(21)、第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いた『17歳の瞳に映る世界』(20)など“社会的に過酷な立場に置かれた女性の姿”を描いた作品が高い評価を得ている。
沖縄では、一人当たりの県民所得が全国で最下位。子ども(17歳以下)の相対的貧困率は28.9%であり、非正規労働者の割合や、ひとり親世帯(母子・父子世帯)の比率でも全国1位(2022年5月公表「沖縄子ども調査」)。さらに、若年層(19歳以下)の出産率でも全国1位となっているように、窮状は若年層に及んでいる。『遠いところ』は、そんな沖縄市のコザを舞台に、幼い息子と夫との3人暮らしをする17歳のアオイ(花瀬琴音)が、社会の過酷な現実に直面する姿を描き、全編沖縄ロケにこだわって撮影された。
本作の監督は長編デビュー作『アイム・クレイジー』(19)で、第22回富川国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた工藤将亮。森田芳光、滝田洋二郎、行定勲、白石和彌など、日本映画界を代表する映画監督の現場で助監督を務めてきた。
長編映画3作目の『遠いところ』は、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最高賞を競うコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに正式出品。約1200席ある上映会場のチケットは事前に完売。上映後は約8分間にわたるスタンディング・オベーションによって、観客から熱狂的に迎えられた。

主人公アオイを演じたのは、これが映画初主演となった花瀬琴音。彼女は撮影前の1ヶ月間、実際に沖縄で生活し、東京生まれ・東京育ちである彼女が、沖縄在住の方々から見ても、違和感なく“沖縄で生まれ育った若者”に見えるアオイ像を体現。アオイの友人役・海音には映画初出演となる石田夢実、アオイの夫マサヤ役には『衝動』(21)の佐久間祥朗など、花瀬と同様に撮影1ヶ月前から現地に入り、沖縄市コザで実際に生活することによって体感したリアルな感覚は、各々が演じる役に反映されている。
『遠いところ』で描かれているのは、沖縄における局地的な社会問題などではない。日本中のどこでも今まさに起こっている事象である。愛する人からの暴力は、地獄のような現状から必死で逃げる道を間違えてしまうのは、すべて自己責任なのだろうか。社会の理不尽と不条理を突きつけられ、悲痛な想いを抱いて絶望しながらも、もがくアオイの姿には、自らの選択肢が正しいかどうかの想像力を持てない少女たちがいることを思い知らされる。主人公・アオイの間違ってしまった、それでも必死に生きた日々の物語を体感して、生まれ落ちた環境が人生を決めるすべてであって良いのだろうかと、今一度問いかける衝撃作がこの夏誕生した。

Story

沖縄県・コザ。

17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾(ケンゴ)と3人で暮らし。
おばあに健吾を預け、生活のため友達の海音(ミオ)と朝までキャバクラで働くアオイだったが、 建築現場で働いていた夫のマサヤは不満を漏らし仕事を辞め、アオイの収入だけの生活は益々苦しくなっていく。
マサヤは新たな仕事を探そうともせず、いつしかアオイへ暴力を振るうようになっていた。

そんな中、キャバクラにガサ入れが入り、アオイは店で働けなくなる。
悪いことは重なり、マサヤが僅かな貯金を持ち出し、姿を消してしまう。仕方なく義母の由紀恵(ユキエ)の家で暮らし始め、昼間の仕事を探すアオイだったがうまくいかず、さらにマサヤが暴力事件を起こし逮捕されたと連絡が入り、多額の被害者への示談金が必要になる。切羽詰まったアオイは、キャバクラの店長からある仕事の誘いを受ける―

若くして母となった少女が、連鎖する貧困や暴力に抗おうともがく日々の中で たどり着いた未来とは。

Staff

脚本・監督 工藤将亮

1983年10月31日生まれ。
京都府出身。 森田芳光監督、石井岳龍監督、犬童一心監督、行定勲監督、山崎貴監督ら現代の日本映画界を代表する名監督達の右腕として、時代劇からSFファンタジーまで幅広いジャンルで研鑽を積む。初長編監督作「アイム・クレイジー」がインディーズ作品ながら、第22回富川国際ファンタスティック映画祭にてNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞する。コロナ禍でのステイホーム出来ない若者を描いた長編2作品目「未曾有」(21)がタリンブラックナイト国際映画祭Rebels with A Cause部門で正式上映され、本年の富川国際ファンタスティック映画祭でも再び公式招待を受けている。本作が長編第3作目となる。

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主題歌 唾奇「Thanks」

自身の経験や心情を赤裸々に歌った楽曲が支持を集め、地元沖縄を拠点としながら、多くのイベントで活躍し、日本のヒップホップシーンにおいて大きな注目を集めている。映像作品に楽曲を提供するのは本作が初めてである。

Comment

今回主題歌、挿入歌を担当させて頂いたRapperの唾奇(つばき)です。今回お話を頂いて作品を観させて頂き、自分を取り巻く環境ととても似ていました。裕福とは言えない環境で育ち、おばぁの存在の大きさなどが描かれていて、僕が生まれ育った沖縄のリアルを感じ取る事ができました。
この作品はフィクションでは無く沖縄のとても小さな一つの物語です。映画を通して少しでも沖縄を知って頂けたら幸いに思います。

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a far shore

Cast

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アオイ 花瀬琴音

2002年生まれ。
2020年-2021年に開催された総勢600名を越す沖縄、東京オーディションから選ばれ、内包された怒りと野生的な存在感は海外映画祭、海外メディアから高い注目を浴びている。主な出演は、テレビドラマ「下剋上アイドル」(17)の主演や、舞台「東京リベンジャーズ」の橘日向役に加え、2022年『すずめの戸締り』海部千果役に抜擢される。本作が映画初主演。

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海音 石田夢実

2000年2月10日福岡県生まれ。
2014年アミューズオーディションを機に芸能界入り。高校3年生まで12年間続けていた新体操ではインターハイ・国体への出演経験を持つ。2020年UNIQLOワールドワイドモデルに抜擢。その他、「ヴァンサンカン」「VOGUE JAPAN」2021年より女優として本格的に始動。

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マサヤ 佐久間祥朗

1998年東京都生まれ。
主な出演作に映画「衝動」(2021/土井笑生監督)、「のぼる小寺 さん」(2020/古厩智之監督)、ドラマ「湘南純愛組!」(2020/AmazonPrime)、MV ビッケ ブランカ「北斗七星」、SEKAI NO OWARI「Diary」、indigo la End「夜の恋は」、Wurts「分かってないよ」など多数。

Review

アオイは尊厳を持って生きる
強い女性である

ーQuinlan

詩情と叙情に溢れた情熱的な傑作

―Filmuforia

巨匠ケン・ローチに対する
日本のアンサーのようだ

―RayMagazin

苦味の一方で優しさがあり、
暗闇の中にも暖かさを表す、絶妙な視点

―Le Polyester

避けては通れない衝撃が無限に込められ、
観るべき一作

―Jeremy C Processing

貧困にあえぐ日本の性差別を、
痛烈に告発する。
溝口健二な現代悲劇。

―Variety

Comment

※順不同・敬称略。

沖縄の若年母子の実態がリアルに描かれていて、余りにも悲しく、言葉がでない。
復帰50年経った今も復帰前から何も変わらないこの現実を、私たちは見ようとしてこなかった。これ以上、全国の2倍いる沖縄の若年母子を放置して欲しくない。全ての県民はこの現実を直視し、親子の明日への希望に満ちた一歩に繋げて欲しい。
(知事、県議、市議の皆さんは真っ先に見て欲しい)

山内優子
おきなわ子ども未来ネットワーク代表理事

淡々と流れていく理不尽な時間を生きる主人公。きっと、彼女には社会が敵に見えている。社会も彼女が悪いかのように思う。本当に彼女の「自己責任」なのだろうか。日本の理不尽さを凝縮したような沖縄で日常的にみられる彼女の世界観。社会という名の敵に翻弄され、追い詰められていく。どう生き抜けば良いのだろう。
彼女を待ち受けているのは、さらなる絶望とかすかな希望だ。

上原由佳子
ノンフィクションライター

私たちの知っている「沖縄」が反逆する映画だ。

沖縄の「すーじぐぁ(路地)」がこれほどさびしく見えたことはない。ところどころ、家々の灯やほのかな街灯が路地の肌をかすかに照らすが、それらが消えてしまえば、彼女たちの生も、すーじぐぁの闇に吸い込まれて消えてなくなってしまいそうな錯覚に陥る。
十代の彼女や彼らたちのどこにもいきようがない絶望を、いったい何が見えなくさせているのだろうか。沖縄の地肌には彼女たちの血や涙が染み込んでいるという現実から、大人たちはどうして目をそむけてしまうのだろうか。彼女たちから生きるちからを奪って嗤っているのは誰なのだろうか。

藤井誠二
ノンフィクションライター

勇気を持って見えないところに目を向ける。目を背けたくなる沖縄の真実。辛く心が締め付けられながらも、「負の連鎖」を断ち切らなければならないと魂が震えました。

一人でも多くの方に見てもらいたい映画です。

山川宗德
タコライスラバーズ代表

「知らんよや」というセリフが印象的だった。 僕自身映画と同じ地域に生まれ育っていく中で何度か聞いた言葉だった。 希望がないから、知識がないから、苦しいからその瞬間から逃げ出すために‥とっさにその言葉を発してしまうのだ。

映画の中でどこまでもドンづまりな人生を生きる彼女たちは実際に生きる僕らの後輩で同級生で先輩だった。だからこの映画は鑑賞中ずっとしんどい。
だからこそ最後まで観てほしい。

平一紘
映画監督 映画「ミラクルシティコザ」

血のつながりを大切にし、シーミーでは親族がお墓の前で集まって食事をする「ゆいまーる」と表現される「光」の方の沖縄の文化、一方で夫婦だから親子だからといって甘えることが許されない場合も少なくない、貧困ゆえの「陰」の沖縄のコントラストがくっきりと描かれています。

懸命にひたむきに生きているアオイのような若い母親を受け入れ、寄り添うことのできる社会の一人でありたいと強く思いました。

栗生みどり
バルナバフードバンク 共同代表

この映画にはドキュメンタリーに負けないほどのリアリティ感がある。
これほど厳しい現実に真正面から向き合うためには そうとうの勇気が必要だったと思う。 そして、何よりも、そうした現実に立ち向かって、 必死に抵抗をする力を自分の中から引っ張り出すアオイの決心に感動し、 希望を感じるようになった。

彼女がその遠くにある岸にたどり着くことを祈る他ありません。

ジャン・ユンカーマン
ドキュメンタリー映画監督

彼女たちは両手をいっぱいに広げ、どこか遠いところへ手を伸ばそうともがいている。 息苦しく行き場がないように思えても必死に前を見据えている。 彼女は私だったかもしれない。 彼女達が安心して呼吸ができる社会は、 私たちにとっても呼吸しやすい社会なのではないだろうかと この映画は問いかけてくれた。

伊藤詩織
映像ジャーナリスト

心が重く、言葉が出なかった。

私は8人兄弟で、そのうち5人を戦争で亡くしました。 お姉さんが、撃沈された対馬丸(疎開船)に乗っていて、私は小さかったけれど、 親がとても泣いていたのを強烈に覚えています。 戦後、身体を売ったり乱暴されたりして生まれたミックスの子たちや シングルマザーのお母さんたちが苦労しているのを沢山見てきました。 そういった記憶も重なり、ずっと胸が痛いです。
アオイと健吾が幸せになることを祈っています。

玉城流翔節会
家元・玉城節子
国指定重要無形文化財「琉球舞踊」保持者

拝金主義と自己責任論に覆われたこの世界の歪みが本土以上に 表出しているともいえる沖縄社会。 本作が彼の地に注ぐ視線は、そこに生きる人々に優しく寄り添いつつも、 あくまでも冷徹だ。

安易に社会を否定するのでもなく、また同時に主人公の自己責任だけに帰することも 周到に避けながら、持たざる者を社会の周縁へと追い込んでいくシステムの在り方を、 そこにある人々の生々しい感情と共に、 映画だけに可能な筆致で鮮やかに描き出している。

神谷直希
東京フィルメックス
プログラム・ディレクター

貧困と若さゆえの無知から社会の泥沼であがく若い家族は、 そこから抜け出すチャンスがあるのだろうか。 現実は希望の光も見えなくなるほどに暗い。

あまり知られていない、暗い日本の一面に、 いかに社会的不平等が世界の隅々にまで広がっているのかを実感した。

Martin Horyna
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭
プログラマー

ドキュメンタリーと見まごうようなリアリティ、 湿気や臭いまで感じる描写力が凄い。

監督やスタッフだけでなく、俳優によるよほどのコミットメントがなければ、 こういう表現は生まれないと思う。

想田和弘
映画作家

アオイは母である。けれどまだ子供でもある。
アオイが見知らぬ大人達にアラガキさん、奥さん、お母さん、と呼ばれる度に 十七歳の少女が背負うには大きすぎる責任に眩暈がした。

「どっか行きたい」というセリフの裏側に断ち切る事のできない負の連鎖が見えた。 彼女達はここ以外を知らないのだ。故に逃げ場が無い。 それは私も同じだった。何度か訪れた事のある地域の裏路地を、 繁華街から少し離れた人々の生活を私は今日まで知らなかった。

この作品の痛みを出来る限り長く覚えておきたい。 そして一人でも多くの人に伝えなければならない。 『映画、ではなく現実』救われるには、救うには知る必要がある。

その一歩目がこの作品だ。

青戸しの
ライター/モデル

丁寧に切り取られたアオイの日常はスクリーンから目を背けたくなるほど、 苦しく逃げ場もない。 沖縄の揺るぎない美しい風景でさえ心を癒してはくれない。
聴き慣れない方言も伝わってくる。 伝わってしまう。 あの子らが笑って暮らせる場所はないものかと、 映画館を出て街を見渡すがやり場のない虚しさだけがまとわりつく。

どうかあの子らに安息の地が見つかることを切に願う。

山田キヌヲ
女優